壱岐の大山祇(おおやまずみ)神社


大山祇(おおやまずみ)神社 


荘厳

祭神

大山積見神、大山積神、伊邪那岐命


私は、今までにこの神社ほど荘厳な感じのする神社を訪ねたことがありません。

道路から入ること10数メートル。

この神社の山に入ったとたん、周りの雰囲気は一変します。

静寂。

絶え間なく水の流れる音。

鳥の声。

元禄6(1693)と刻まれた、小さな石祠だけが残っています。





巨石

周辺は、巨大な転石が散在しています。

深山幽谷の墨絵の世界に踏み入った感じがします。

この岩石に沿って、水が流れ、渓流を作っています。

このような渓谷は、壱岐には、ここをおいてはありません。

全体が、墨絵の世界。

し〜んと静まりかえっている風景は、山の神の大山祇神が、見守っているからでしょうか。












巨木

大きな石を取り囲むように、巨木が生い茂っています。

スダジイ、イスノキ、カカツガユ、バクチノキなどが生育しています。

この神社の境内の木や草は、切ることも折ることも持ち出すことも禁止されて今日に至っています。

神罰やたたりがあるためです。

そのため、人の手がまったく入っていないため、さながら原始林のようです。






祭神

祭神は、大山津見神(オオヤマツミノカミ)という男の神様です。

大山津見神は、大山に住む大いなる山の神という意味です。

その名の通り山を支配する神であり、同時に農業、狩猟とも深く関わる神でもあります。

別名、
和多志大神(わたしのおおかみ)ともいいます。

「わた」は、海の古語で「海の神」であることも表しています。

そのため、古くから海人たちの信仰も集めています。

このことから、海の近くの神社に祀られることが多く、海上安全の神様でもあるわけです。

この神社も、近くに海があります。

また、大山津見神は、穀物から酒を造った初めての神様でもあります。

次女のコノハナノサクヤヒメが、結婚して海幸彦や山幸彦という孫を生んだ時に、それを祝って、最初に酒(甜酒(あめのたむざけ))を造り、神々に供げました。

そのため、酒造の神として酒造業者の信仰もあつい神様です。





神様のお話

伊弉諾尊(いざなぎのみこと)の妻である伊邪那岐命(いざなぎのみこと)が、火の神である火之迦具土神(ひのかぐつちの かみ)を産んだとき、陰部に火傷ができ、これがもとで、伊邪那岐命は死んでしまいました。

夫の伊弉諾尊(いざなぎのみこと)は、とても怒り、十挙剣で、火之迦具土神(ひのかぐつちの かみ)の首を、切り落としてしまいました。


このとき、したたり落ちる血から、産まれたのが大山祗神です。


一方、「
伊予国風土記」では、大山祗神は、百済国からやってきたと書いています。

また、次のような話もあります。


大山津見神は、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)に、
自分の娘二人を嫁に差し出しました。

妹の方は、木の花が咲き乱れるような絶世の美女の木花之佐久夜毘売
(このはなさくやひめ)でした。

それに対して、姉の方は、名前を、石長比売(いわながひめ)といい、醜い顔をしていましたが、その代わりに、
一緒にいれば、良い運が長く続くという特質を持っていました。

瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)は、美女の木花之佐久夜毘売(このはなさくやひめ)だけを嫁にもらい、醜い顔をしていた石長比売(いわながひめ)の方
は、実家に帰してしまいました。

怒ったのは、父親の大山津見神です。

石長比売(いわながひめ)を嫁にやったのは、生まれた子どもが、雨が降っても風が吹いても石のように永久に生命があるようにと願ったからだ。

また、木花之佐久夜毘売(このはなさくやひめ)を嫁にやったのは、木の花の栄えるように、生まれてくる子どもが栄えるようにと願ったからだ。

こうなった以上は、これからは、天津神
(あまつかみ・天上にいる神。高天原にいる、または高天原から天降った神の総称)の子どもは、木の花のように栄えるが、その命はかないものとなろう」と言いました。

今でも天皇家の寿命が短いのは、そのせいだとされています。


海幸・山幸

瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)と木花之佐久夜毘売(このはなさくやひめ)は、結婚し、一夜の交わりをします。

やがて、妻は、妊娠しますが、夫は、たった一日の交わりで子供が産まれるのはおかしい。

自分の子ではなく、きっと国津神の種であろう。と、疑います。

これに対して、妻は、「お腹の子どもが、
もし国津神の子であったら、出産のときに無事ではありますまい。もしあなたの子であれば、無事に産まれるでしょう」と言って、お産小屋を土で固めて、逃げることが出来ないようにして、小屋に火をつけて、燃え盛る小屋の中で、子どもを無事に産み、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)の子供であることを証明します。

燃えさかる火の中で生まれた子どもは、長男が火照命(ほでりのみこと・海幸彦)です。

次に生まれた次男は、火須勢理命
(ほすせりのみこと)です。

この次男は、その誕生の時に名前が登場するだけで、その後は一切出てきません。

三男は、
火遠理命(ほおりのみこと・山幸彦)です。