壱岐の三十三ヶ所巡礼札所(1)
壱岐の三十三ヶ所巡礼の起こり |
室町時代末期、 波多帯刀宗円という人が、壱岐に住んでいました。
宗円は、当時、壱岐を支配していた、唐津岸嶽城主、波多三河守親(ちかし)の叔父にあたります。
宗円は、厚く仏様を信仰し、いつも観世音を念じ、多くの人々を救っていました。
ある夜、諸吉村熊野権現(今の、高御祖神社)が枕元に現れて、「お前は、今まで、ずっと、深く仏を信心してきた。お前の近くに仏工がいる。その仏工に順礼33体を彫らせて、壱岐全体に配分したらたくさんの功徳がある」とのお告げをしました。
宗円が、不思議なこともあるものだと思いながら、夢から覚めて、直ぐに神前に行くと、1人の男がうずくまっていました。
宗円が、「お前は何者だ?」と尋ねると、「私は、京都で生まれ、今は筑前に住んでいる仏工です。」と答えました。
宗円は、この仏工を、家につれて帰り、「私は、33体の観音像を造りたいと、思っている」と言うと、その仏工は「私も、33体の観音像を造りたいと思っていました。」と言って、すぐ観音像の彫刻にとりかかりました。
3年ほどかかって33体の観音像が出来上がりました。
宗円は各村々の信者を集めて、33人の信者に、観音像を一体ずつ与え、33堂に安置させました。
これから壱岐の西国33番札所の巡礼が始まり、たくさんの人が、お参りをするようになった、と言われています。
壱岐の三十三番札所の特徴 |
壱岐の札所は、33番までありますが、実際にお参りするのは22の札所をまわれば、33番全部の札所をまわることができます。
というのは、1つの札所で、いくつかの札所を掛け持ちしているところがあるからです。
華光寺には5ヶ所、観世音寺には4ヶ所、円光寺、玉泉寺、龍蔵寺、金谷寺にはそれぞれ2ヶ所の札所があります。
札所を巡るときには、日本全国同じですが、訪れた札所に、お札を、ベタベタと貼りつけていきます。
貼りつけるお札の色には、赤色のお札と白色のお札があります。
どちらのお札にも、「壱岐三十三ケ所巡礼」と書かれています。
三十三番札所 |
一番札所 龍蔵寺 |
龍蔵寺は、壱岐の曹洞宗のお寺の本寺です。
室町時代に開山されました。
当初は、真言宗でしたが、江戸時代に曹洞宗になりました。
第一番御詠歌 補陀洛や 岸うつ波は三熊野の 那智のお山に ひびく滝津瀬
二番札所 福寿庵 |
御詠歌2番 ふるさとを はるばるここに紀三井寺 花の都も 近くなるらん
三番・十四番・十五番・二十二番・二十八番札所 華光寺 |
曹洞宗。
壱岐を支配した、唐津波多氏の菩提寺として、造られたお寺です。
波多氏一族の墓や日高氏の墓もあります。
豊臣秀吉が、朝鮮に出兵したとき、勝利を祈って、壱岐の僧侶が集まって、祈祷したお寺でもあります。
キリシタンに関係ある遺跡や流人の鐘など、いろいろな文化財も豊富なお寺です。
御詠歌 3番 父母の 恵も深き粉河寺 ほとけの誓い たのもしの見や
御詠歌14番 いで入るや 波間の月を三井寺の 鐘のひびきに あくる湖
御詠歌15番 待てといわば いとも畏し花山に しばしと啼かん 鳥の音もがな
御詠歌22番 おしなべて 老いも若きも総持寺の ほとけの誓い 頼まぬはなし
御詠歌28番 波の音 松のひびきも成相の 風ふきわたす 天の橋立
四番札所 長泉寺 |
お寺自体は、廃寺になりました。
周辺には、長泉寺の遺跡が残っており、往時を思い出させてくれます。
ここには、マリア観音像などのキリシタンの遺跡もあります。
一部が破損しているのが残念です。
御詠歌4番 深山路や 檜原松原わけゆけば 横尾寺に 駒ぞいさめる
五番・十番札所 円光寺
曹洞宗
このお寺にある、木造不動三尊像は、県指定文化財になっています。
この不動三尊像は、年に2回開帳されます。
境内に植えてある、ヤマザクラは、咲き乱れるときれいです。
御詠歌 5番 参るより頼みをかくる葛井寺花のうてなに紫の雲
御詠歌10番 夜もすがら月を三室戸わけゆけば宇治の川瀬に立つは白波
六番札所 金蔵寺 |
真言宗
壱岐四国88箇所霊場では、1番札所のお寺です。
このお寺には、梵鐘や鰐口(わにぐち)などの県指定文化財がたくさんあります。
御詠歌6番 岩をたて 水をたたえて壺坂の 庭の砂も 浄土なるらん
七番札所 清滝 |
急な階段を上りきったところにあります。
隣には、きれいな水が流れ落ちている、小さな崖もあります。
御詠歌7番 けさ見れば つゆ岡寺の庭の苔 さながら瑠璃の 光なりけり
八番・十三番札所 玉泉寺 |
曹洞宗
お堂のなかには、たくさんの仏像が並んでいます。
近くには、波多隆の墓や御手洗水の滝などもあります。
御詠歌 8番 いくたびも 参る心ははつせ寺 山もちかいも 深き谷川
御詠歌13番 後の世を 願うこころはかろくとも ほとけの誓い おもき石山
九番・三十一番札所 長栄寺 |
今は、焼失しましたが、壱岐七堂の一つです。
現在、建て替えられた立派なお寺の敷地にあります。
近くには、壱岐の武士が信仰していた、山浦神社もあります。
御詠歌9番 春の日は 南円堂にかがやきて 三笠の山に 晴るるうす雲
御詠歌31番 八千年や 柳に長き命寺 はこぶあゆみの かざしなるらん
十一番札所 西福寺 |
臨済宗
このお寺は、アジサイの花が、その時期になるときれいに咲きます。
裏山には、曲がりくねった孟宗竹もあります。
寺の裏には、古墳もあり、とても変化に富んだ、お寺です。
御詠歌11番 逆縁も もらさで救う願なれば 准胝堂は たのもしきかな
十二番札所 龍峰院 |
臨済宗
とても、きれいに整っているお寺です。
印通寺港を真下に見ることができ、とても景色の良いお寺です。
御詠歌12番 みなかみは いずくなるらん岩間寺 岸うつ波は 松風の音
十六番・十七番・十九番・二十番札所 観世音寺 |
曹洞宗
近くには、温泉もあり、お参りの後は、ここで一泊して、疲れをいやすのもいいですねぇ。
日帰り入浴もあります。
御詠歌16番 松風や 音羽の滝の清水を むすぶ心は 涼しかるらん
御詠歌17番 重くとも 五つの罪はよもあらじ 六波羅堂へ 参る身なれば
御詠歌19番 花を見て いまは望まぬ革堂の 庭の千草も 盛りなるらん
御詠歌20番 野をもすぎ 山路に向かう雨の空 善峠よりも 晴るる夕立
十八番札所 医王院 |
湯ノ本温泉の街なかにあります。
御詠歌18番 わが思う 心のうちは六の角 ただ円かれと 祈るなりけり
十九番札所 観世音寺 |
十六番札所 観世音寺を参照してください。
二十番札所 観世音寺 |
十六番札所 観世音寺を参照してください。