なまこに負けたくじら


昔、たくさんのさかなたちが、集まって話をしているとき、くじらが、言いました。

「海のなかで、おれが一番大きい。

おれにかなうものは、いない。

おれほど、えらいものはない。」、と、言いました。

















くじらが、そう言ったとき、とつぜん、大きな声で笑ったものがいました。

くじらが、笑ったものを、みると、なまこでした。

くじらは、のろまな、なまこに、笑われたのに腹を立てて、なまこに、「それなら、どちらが、泳ぐのが速いか、泳ぎくらべをしようじゃないか。」と、言いました。








なまこは、「よしやろう。でも、三日間だけ待ってくれ。三日後に、湯の本浦から出発しよう。」と、約束しました。

すぐに、なまこは、なかまのところに行って、みんなを集めて、言いました。

「今日、くじらと泳ぎくらべをする約束をした。

しかし、くじらに勝てるわけがない。

それで、考えたんだが、みんな、いっぴきずつ、八つの浦に行ってくれ。

そして、くじらが来たら、『な〜んだ!今、来たのか。』、と、言ってくれ」、と、なかまのなまこに頼みました。

みんなは、承知して、八つの浦にちらばって行きました。

それから、三日目になりました。

くじらとなまこは、「それでは、これから、勝本浦まで泳いで競争しよう。」と、言って、泳ぎ始めました。

くじらは、ものすごいスピードで泳ぎ出しました。

これに対して、なまこは、コロコロところがりながら、泳ぐので、なかなか前に進みません。

くじらは、あっというまに勝本浦に着きました。

と、そこに、いっぴきのなまこがいるではありませんか。

くじらは、なまこに、「なまこくん、なまこくん。」と、声をかけました。

なまこは、くじらの声を聞いて、「な〜んだ!今、来たのか。」と、言いました。

くじらは、それを聞いてびっくりしました。

くじらは、なまこが、早く着いたとは、とても信じられません。

そして、なまこに、「それじゃ〜、瀬戸浦まで、競争しよう。」と、言って、また、ものすごいスピードで泳ぎ出しました。

くじらは、瀬戸浦まで泳いで来て、「なまこくん、なまこくん。」と、言って、なまこを呼ぶと、「な〜んだ!今、来たのか。」、と、なまこが、こたえました。

こうして、くじらとなまこは、次に、芦辺浦、八幡浦、印通寺浦、郷の浦、渡良浦まで、競争しました。

しかし、どこに行っても、なまこが、そこにいたので、くじらは、先をこされた、と、思いました。

そして、くじらは、壱岐を一周しましたが、最後まで、なまこに、勝つことはできませんでした。

くじらは、さいごに、へとへとになって、なまこにあやまった、と、いうことです。