郷土料理
私は、郷土料理というとその地方の人たちが日常、いつでも食べているのが郷土料理と思っていました。
それで、値段も高くなく、たくさん、好きなだけ食べることができると勝手に思っていました。
ところが、その地方で郷土料理と看板を出してあるお店に行くと、値段も高くて、とても、簡単に手が出るものではないということが分かりました。
そうです。
人が作った、料理を注文して食べると高いわけです。
そういうところから、今から下に紹介する壱岐の郷土料理は、壱岐の人たちが普段から毎日食べているものではないことをご承知ください。
私の場合、下に書いています郷土料理を食べるときには、自分で、海に行って、材料をとって来て、自分で、調理して食べるので、値段が張ることはあまりありません。
でも、観光客の方達が、壱岐で郷土料理を食べると、結構な金額がかかるかもしれません。
イカ料理 |
皆さん、すでにご存知のように壱岐は、西日本有数のイカの水揚げが多いところです。
壱岐では、1年中、イカがとれます。
春から夏は「剣先イカ」、秋には高級イカとして知られている「水イカ」、冬場は「スルメイカ」という具合です。
「剣先イカ」の水揚げは壱岐が日本一を誇っています。
さて、イカは、先ず刺身がなんといってもおいしいです。
壱岐では新鮮なイカがいつでも手に入りますから、そのまま、先ず刺身にして食べます。
イカの刺身はイカの種類に関係なくとてもおいしいです。
特に、イカの刺身を食べるときには、イカの肝をすりつぶして、わさびじょうゆと混ぜたものをつけて食べると何ともいえません。
また、「イカ飯」にして食べてもおいしいです。
イカ飯はイカのお腹に、壱岐の銘柄米こしひかりの中に赤米を少し混ぜて作ります。
赤米のほのかな赤がイカの赤さとちょうどマッチしてこれもまたうまいものです。
イカは中途半端に炊くと、硬くなるので、柔らかくなるまで徹底的に炊いて仕上げるのが、おいしく食べるコツです。
壱州どうふ |
壱岐のとうふは、都会のとうふに比べて、固く作られています。
縄でゆわえて持って帰れるほどの固さがあります。
一つのとうふの大きさも、15cmくらいあります。
壱岐のとうふが固い原因は、普通のとうふを作るときよりも、2倍の豆乳を入れ、海水を少し加えたにがりを使うことにあります。
海水を汲む場所も秘密にしている人もいるほどです。
壱岐どうふをさかなに、壱岐しょちゅうで一杯。
たまりませんな〜。
ウニ飯 |
壱岐では海女さんが素潜りで潜水服を着けることなくウニ、アワビ、サザエなどをとっています。
潜水服を着て潜ることは資源保護のためにしていません。
それでも水深10mくらいは潜る人もいるそうです。
水深10mですよ。
私の場合、2〜3m潜っても、耳や頭の周りが締め付けれるような感じがします。
ウニ飯は「亀の手」をダシ汁にして作ります。
最近は、亀の手を酒のつまみにする人が増えて、今はなかなか亀の手が手に入らなくなりました。
ウニ飯は、生ウニをしょうゆやだし汁で炊き込んだものです。
ほのかに、ウニの香りがして食欲をそそります。
ウニは時期によってとれる種類が異なります。
8月中旬くらいまでが「紫ウニ」、8月中旬〜10月中旬までが「赤ウニ」がとれます。
あと、もう1つ「バフンウニ」というのもあります。
壱岐では「バフンウニ」のことを「ガゼ」と呼んでいます。
壱岐のウニは、掛け値なしで日本で一番おいしいです。
その秘密はえさにあります。
ここ、壱岐の島の海底には、玄界灘の荒波にもまれている海藻がたくさんあり、それをウニたちがえさにしているからです。
私は、北海道に行ったときに、やはり、ウニ飯を食べてみましたが、壱岐の方が甘みがあっておいしいと感じました。
もちろん、北海道の人が壱岐に来て、壱岐のウニ飯を食べると、どのように感じるかは分かりませんが。
梅ぼし |
毎年、壱岐の人たちは、自分の畑や庭でとれた、梅で、梅ぼしを作ります。
梅は、少し黄色くなったものを使います。
我が家では、塩加減が少し濃い目の梅ぼしを作ります。
もちろん、梅ぼしの味は、それぞれの家庭によって違います。
私は、梅ぼしが大好きで、子どもの頃は、梅ぼしの梅の種を、歯でわって、中の実を食べたものでした。
今は、歯で、梅ぼしの種をわると、歯の方が、われてしまいそうなので、やりませんが。
梅ぼしは、おむすびの中に入れたり、お茶づけの中に入れたり、魚料理のにおい消しに使ったりと幅広く使えます。
押し寿司 |
お寿司というと、握り寿司が一般的ですが、壱岐には、押し寿司というものがあります。
壱岐でとれる、コシヒカリやヒノヒカリですし飯を作ります。
先ず、すし飯を、すし枠(押し枠)の1/3くらい入れます。
その上に、具を並べます。
さらに、その上にすし飯を入れます。
具をサンドイッチするようなイメージです。
寿司の具は、壱岐でとれたイワシ、サバ、アジなどの新鮮な刺し身、千切りにしたたまご焼き(きんし卵)、ヤキノリ、千切りにしたショウガ、赤いソボロ(桜デンブ)、シイタケ、カンピョウ、ゴボウ、カマボコなどです。
一番上に、千切りにしたたまご焼き(きんし卵)をのせて、すし枠(押し枠)のふたで、押して締めれば完成です。
ここでは、具をサンドイッチする方法を紹介しましたが、具を、真ん中に置かないで、押し枠の一番下に置いて、作る人もいます。
およごし |
一般的には、「白あえ」といわれていますが、壱岐の「およごし」は、一味も二味も違います。。
先ず、壱州どうふを細かくくだいて、すり鉢ですり、その中に、季節の野菜や海産物を具として、たくさん入れます。
入れる野菜には、大根、にんじん、たけのこ、キャベツ、かぼちゃ、なす、ほうれん草、木の芽など、その季節にとれるものです。
野菜は、原型をなくさないように、やや、こまめに切ります。
海産物としては、ヒジキ、ワカメ、イカなどです。
さらに、ゴマを炒(い)って、すりおろしたものを入れます。
コンニャクも、小さくちぎったり、切ったりして入れます。
これらのものを、混ぜ合わせるときには、手で混ぜ合わせるのがポイントです。
手のあぶらが、ほどよく具に、しみわたり、とてもおいしくなります。
味付けは、壱州みそ、壱岐のうすくちしょう油、砂糖です。
カジメ |
カジメのとれる時期になると、海岸にカジメが打ち上げられます。
私が、子どもの頃は、この打ち上げられたカジメを拾って、持ち帰り、軒下につるして、パリパリになるまで、乾燥させ、それを、手でもんで、粉にして、食べたものでした。
食べ方としては、味噌汁の中に入れるのが一般的です。
味噌汁の中に入れると、ドロドロになり、その粘り気が食をそそります。
また、カジメの粉と塩を混ぜて、ふりかけにして食べてもいけます。
壱岐のカジメには2種類あって、味噌汁の中に入れると、茶色になるものと、緑色になるものとがあります。
味はどちらも、変わりません。
ガゼ味噌 |
ガゼというのは、バフンウニのことです。
この、ガゼの黄色い卵の部分を煮て、壱州みそと混ぜ合わせたものを、ガゼ味噌と呼んでいます。
昔は、大潮のときに、このガゼをたくさんとってきて、これで、ガゼ味噌を作ったものでした。
今は、ガゼもだんだん減少してきました。
ガゼ味噌は、ご飯の上にのせて、そのまま食べます。
ガゼの持つ磯の香りと風味は、何杯でも、食が進み、つい、食べ過ぎてしまうほどです。
島茶漬け |
壱岐では、いろいろな種類の魚がたくさんとれます。
その中の、どの魚でもかまいません。
まず、しょうゆ、酒、みりん、すりゴマを合わせて冷蔵庫で1日くらい寝かせます。
これで、たれの完成です。
この中に、新鮮なお魚の切り身を入れます。
そうですね〜。
2〜3時間というところでしょうか。
徹底的に、おいしいものを追求する人は、半日以上漬け込むと味が良くしみて、とてもおいしくなります。
こうして作ったものを、どんぶりに、壱岐の銘柄米こしひかりをついで、その上に乗せます。
わさびやのりも一緒に乗せてもいいですよ。
そして、その上から、熱い、濃い目のお茶をたっぷりかけます。
熱いお茶は魚の臭みを消してくれるはたらきをするので、ぬるいお茶は駄目です。
必ず、熱いお茶にしてくださ
生ウニのぼっかけ丼(どん) |
これは、どんぶりに壱岐の銘柄米「こしひかり」を盛って、これに、ご飯が見えなくなるほどのたくさんの生ウニをご飯の上に乗せて、その上にしょうゆをたらし、かき混ぜて、豪快に食べるものです。
ここで使われるウニは主に紫ウニです。
ご飯の上に乗せたウニは、黄色をしていて、1口食べただけでも、ほんのりと甘く、磯の香りも含まれているので、食欲をそそります。
Simple is the best.
この表現がぴったり当てはまる壱岐の郷土料理です。
ひきとおし |
「ひきとおし」は、ひと言で言えば、鳥鍋です。
しかし、壱岐の鳥鍋は味が違います。
壱岐では、たくさん人が集まると、この鍋を囲んで、食べながら、壱岐しょうちゅうを飲み、和気あいあいと、楽しいときを過ごします。
材料は、何といっても、壱岐の地鶏(じどり)です。
壱岐の、地鶏は、放し飼いにされています。
そのため、肉は、とてもしまっていますが、思ったよりも、固めです。
都会の人は、肉は柔らかめのものを好みますから、この壱岐の地鶏の肉は、当初は違和感を感じることと思います。
そのため、少し、ことことと、長めの時間ゆでます。
壱岐の地鶏は、かめばかむほど、味わいがあり、一度、食べたら、必ず、病みつきになること、うけあいです。
先ず、地鶏とごぼうを油でいため、こくのあるだし汁を作ります。
地鶏の肉がやわらくなったら、そのだし汁の中に、固めのソーメン、壱州どうふ、こんにゃく、しいたけ、ねぎ、はくさい、しゅんぎく、などの野菜を入れます。
味つけは、しょう油、砂糖です。
これは、壱岐で、お勧めの伝統料理です。
一度、お試しあれ。
ブリの腹わたのみそ汁 |
これが実にうまい。
ある有名なフォーク歌手が壱岐に来たとき、あまりのおいしさに、2杯もおかわりしたという、いわくつきの料理です。
特に、冬場は、あぶらがのって、何杯でもいけます。
魚の、内臓は、すぐにいたむので、とれたての新鮮な内臓を使います。
味付けは、壱州みそです。
基本的には、魚の内臓と季節の野菜を、鍋に入れて、ぐつぐつ煮ます。
具が煮えたら、みんなで、鍋をつついて食べます。
昔は、寄り合いがあると、必ず、食べたものでした。
私も、東京で40年暮らしましたが、都会では、この味は出せません。
壱岐に来て、食べてみてください。
ゆべし |
ゆずは、11月頃、収穫されます。
壱岐では、ゆずは、焼酎の中に入れてゆず割りに使ったり、ゆず酢を作ったりするだけではなく、ゆずみそ(壱岐ではこれをゆべしと呼んでいます。)の材料になったりします。
特に、ゆずみそは、壱岐の農家では作らない人がいないくらい、メジャーな食べ物です。
ゆずみそは、ゆずの皮を小さく刻んで、、弱火でことこと煮て、かき混ぜながらゆっくり仕上げていきます。
各家庭により、味付けも微妙に違い、それだけに奥行きが深い食べ物です。
食べ方は、壱岐の銘柄米である、コシヒカリのご飯の上に乗せて食べます。
これが、実にうまい。
壱岐では、このゆずみそ作りを体験できます。
一度、郷土料理を味わってください。
らっきょう漬 |
梅ぼしを作るのと同じように、壱岐の人たちは、畑にラッキョウを植えて、ラッキョウ漬けを、毎年作ります。
ラッキョウには、玉の大きいものと小さいものがありますが、我が家のラッキョウは、玉の小さいものを使います。
若い人たちは、ラッキョウを漬けるのは、あまり得意ではないのですが、お年寄りのいる家庭では、作り方を教わって、作っています。
ラッキョウの味も、それぞれの家庭によって、違います。
ラッキョウの、塩漬けもパリパリして、歯ごたえが良く、酒のつまみに、良く合います。